大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

京都地方裁判所 昭和46年(手ワ)192号 判決

原告

京都信用保証協会

代理人

芦田礼一

被告

今井清治

主文

被告は原告に対し金三一〇、〇〇〇円及び内金一一〇、〇〇〇円については昭和四四年一月三〇日から、内金二〇〇、〇〇〇円については昭和四四年二月七日から、各支払ずみまで年六分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告の負担とする。

本判決は仮に執行できる。

事実《省略》

理由

一、原告は、被告が振出した左記、(1)(2)の約束手形各一通を所持している。

(1)金額   一一〇、〇〇〇円

支払期日 昭和四四年一月三〇日

支払地、振出地 京都市

支払場所 京都信用金庫壬生支店

振出日  昭和四三年一二月一八日

振出人  今井清治(被告)

受取人  武田信一(武田工業)(以上ペン書き)

第一裏書裏書人 左官工事請負

武田宗久(以上、記名判押捺による)

第一裏書被裏書人 京都中央信用金庫

第二裏書裏書人 京都中央信用金庫百万遍支店

支店長 矢野七郎

第二裏書被裏書人 京都信用保証協会

(原告)

(2)金額   二〇〇、〇〇〇円

支払期日 昭和四四年二月七日

振出日  昭和四三年一〇月二五日

支払地、振出地、支払場所、振出人

(1)と同じ

受取人  武田宗久

第一裏書裏書人 武田宗久

第一裏書被裏書人 伏見信用金庫

第二裏書裏書人 伏見信用金庫修学院支店

支店長 鳥羽正悟

第二裏書被裏書人 京都信用保証協会

(原告)

本件、(1)、(2)の手形は、各支払期日に支払場所に呈示されたが、預金不足の理由により、その支払を拒絶された。

上記の事実は、被告において自白したものとみなす。

したがつて、原告は、本件(2)手形の適法の所持人と推定される。

二、本件(1)手形の裏書の連続

本件手形の受取人「武田信一(武田工業)(以上、ペン書き)」と第一裏書人「左官工事請負武田宗久(以上、記名判押捺による)」との間に裏書の連続を否定するのが相当である。けだし、右受取人の認載と右第一裏書人の記載とを全体として比較対照してみても、右両記載は社会通念上同一人を表示するものと認めることができないからである。

「武田宗久は武田信一の通称である。」という事実(手形上の記載に現われていない事実)を、判断の資料として、受取人「武田信一(武田工業)(以上ペン書き)」と第一裏書人「左官工事請負武田宗久(以上、記名判押捺による)」との間に裏書の連続を肯定することはできない。けだり手形裏書の有無は手形上の記載においてのみ純形式的に判断するのが相当であるからである。

したがつて、原告訴訟代理人の、本件(1)手形の受取人と第一裏書人との間の裏書の連続肯定の主張は、採用できない、

三被告は、本件(1)手形を武田信一に振出交付し、武田信一は、その通称である武田宗久名義で、これを京都中央信用金庫に裏書譲渡し、京都中央信用金庫は、これを原告に裏書譲渡した。

右事実は、被告において自白したものとみなす。

したがつて、原告は、本件(1)手形の実質的権利者であると認められる。

四、よつて、本件手形金合計金三一〇、〇〇〇円及び内金一一〇、〇〇〇円に対する昭和四四年一月三〇日から、内金二〇〇、〇〇〇円に対する昭和四四年二月七日から各支払ずみまで年六分の割合による法定利息の支払を求める原告の本訴請求を、正当として認容し、民事訴訟法第八九条第一九六条を適用し主文のとおり判決する。(小西勝)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例